Yesを引き出す7つのトリガー[説得の科学]

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Yesを引き出す7つのトリガー[説得の科学]

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説得できる者が富や名声など、自らの目標を達成する。

 世界一の権力を手にするのは、夢を実現するのは誰か。成功する人は、実際に物事を動かすことができる。目的や願望を遂げるために、相手をうなずかせる力を持っているのだ。あなた自身や組織の成功、あるいは生存は、ただ1つのスキルにかかっている。

 説得力、すなわち相手に「イエス」と言わせて自発的に同意させる、あるいは指示に従わせる、あるいは代わりに動いてもらうことである。権限は上司から与えられるものかもしれない。だが、結果が出せるかどうかは、いかに自分が人を動かせるかで決まる。

 説得できる者が支配する。これまでもそうだったし、これからもそうだろう。説得に秀でた人は並外れた力を持っている。改革を促し、優秀なチームを作り上げ、組織全体を活性化させて、成長と利益をもたらす。他の人を新たな高みへと引っ張っていく。

 そして、富や名声、影響力といった自らの目標を達成するのである。人と人との関わり合いには、協力を促したり結果を引き出したりする力、すなわち説得が欠かせない。優れたリーダーというものは人をやる気にさせるものだ。心に火をつけて、行動を起こさせる。世界中の偉業は説得を通して成し遂げられてきたのである。

この知識が、これからの対人関係をがらりと変える。

 そう。説得が成功のカギだ。それはすでにわかっている。では、この説得のプロセスに関して今日新たにわかったこととは何か? これまでとの違いは何だろう? 人をうまく説得できるようになるにはどうすればよいのか? これが実は非常に単純で、しかもまさに驚くべきことなのである。

 近年開発されたリアルタイムの脳画像解析技術と、それによってもたらされた神経科学の研究から、私たちはここへきて初めて、脳が情報を処理する様を実際に見ることができるようになった。ようやく、行動を決定する判断がどのようになされるのか、その判断にどのような影響を与えることができるのかがわかったのである。そして、この知識がこれからの対人関係をがらりと変えることになる。

 神経科医、神経心理学者で、ジョージワシントン大学メデイカルセンターの神経科臨床教授でもあるリチャード・レスタック博士は、米公共放送テレビの5部作シリーズ番組にもなった彼の著書『The Secret Life of the Brain(仮邦題:知られざる脳の世界)』の中で、驚くべき新事実を明らかにしている。

 人文科学ならびに医学の分野でリナカー賞などを受賞した世界有数の神経科学者であるレスタックは、「成人の脳」という章で、最新の脳研究について鮮やかに一言でまとめあげた。本書の冒頭にも示したその言葉は、「人間は感じることができる思考の機械ではなく、考えることができる感情の機械である」である。

脳は論理で動く機械ではない。つまるところ……。

 レスタックは別の著書『脳トレ:最先端の脳科学研究に基づく28のトレーニング』(池谷裕二監修、青木哉恵訳、アスペクト)でも、随所に新しい知識を盛り込み、脳の機能と実際の感覚処理に関する有益な最新情報をまとめあげている。

一般的な解釈とは異なり、脳はコンピューターなどの機械と同じように動作するのではない。したがって、そのような不自然で非生産的な動きを脳に強要することはやめなければならない。脳は論理で動く機械ではない。つまるところ、人や物に対する感情が意識的な判断の前に働いているのである。

 これは強烈な内容だ。過去数千年にわたって、少なくとも教養ある社会の中では、何よりもまず論理を用いて決断を下し、行動しろと教えられてきたのである。ましてやその間中ずっと、最も見識ある人々でさえ総じて脳に不自然で非生産的なことをやれと命じていたのだ。なんと愚かなことか。

 だが朗報もある。関係者全員のためになるような決断と行動へ向けて、人を説得し、動かし、承諾させ、やる気にさせるための、さらに良い方法があるのだ。

脳の動きに逆らわず、自然な働きに即した方法で。

 確かに、販売員や広告担当者などは長年にわたって感情に訴える手法を用いてきた。とはいえ、それは一か八かだった。私たちは本能に頼るか、さもなくば苦しい試行錯誤を繰り返していたのである。それが今、説得という科学において、努力すれば誰にでもできるようになるという明確な証拠を手に入れた。

 脳が情報を処理する方法がわかればわかるほど、他の人とのコミュニケーションがうまくいくようになる。しかも脳の動きに反したやり方ではなく、脳の自然な働きに即した方法で。

 科学が発達するにしたがって、一般的な説得方法がまるで間違っていたことがわかってきた。これまで学んできたのは、可能な限り最適な議論、最適なデータ、最適な情報を用いて説得するやり方だった。求められる思考や決断や行動を導き出すために、すべてが論理的に提示されていた。

 ビジネスリーダーをはじめとして、ほとんどの人は、意思や行動を決定するにあたって相手も論理に頼りきっているものと考えていた。ところが突如として、まったく驚いたことに、脳はそんな風には働かないのだという。

ビジネス界は間違った振る舞いをしている。

 『ビジネス・トゥ・ビジネス』誌で、エモリー大学ビジネススクールのジョゼフ・レイマン教授が以下のように述べている。

 脳画像解析技術によって、我々は脳の活動を測定することができるようになった。しかも神経は嘘をつかないので、以前よりもはるかに正確に測定できるようになったと言える。

 この百億もの小さな神経というものが、我々人間の行動には化学的生物学的な根拠があることを証明してくれている。彼らのメッセージはこうだ。ビジネス界は間違った振る舞いをしている。

 なんということだ。衝撃的な一説である。だがとにかく、これで人間の行動が化学的生物学的根拠に基づいていることがわかる。

イエスを引き出すということは、このプロセスなのだ。

 それがわかれば、これまで何が間違っていたのかがうかがえるはずだ。さらに肝心なのが、相手を動かすためにやるべきことが見えてくるということである。では、人が思考機械ではなく、主に論理や経験に基づいた推論に左右されるものでもないとするなら、いったいどのようにして意思決定が行われるのだろうか? さらに、他人の意思決定に影響を及ぼすには?

 その答えについては本書全体を通じて十分に説明するとして、まずは簡単に述べておこう。個々の人間は自分の心にデータベースを持っていて、それが外部からの刺激に対して瞬時に正しい反応を感じとる能力のもとになっているのである。

 人は生まれたときから心のデータベースに情報を蓄積し、それが個人の自己誘導システムを形作っている。このシステムが外部からの刺激に対して自動的に最適な反応を引き起こす。反応のきっかけは脳にしつかりと組み込まれていて、人それぞれだ。つまり、「イエス」という答えを引き出すということは、説得したい相手の意思決定誘導システムをオンにするというプロセスなのである。

「影響力に変えられなければ、権力など無意味だ」。

 前国務長官のコンドリーザ・ライス博士は19歳のときにデンバー大学を優等で卒業した。権力の座についた彼女はこう述べるに至った。「影響力に変えることができなければ、権力など無意味だ」。

 ハーバード・ビジネス・スクールのマイケル・D・ワトキンス教授も同意見である。「形式的な権威などの力だけでは物事を動かすには役不足だ。リーダーには説得力が求められる」。

 社長も重役も、管理職も平社員も、それぞれの説得能力に応じて成功したり失敗したりする。おのおのが上司や部下、組織の横のつながりを動かし、同意を得なければならない。いやそれどころか、説得しなければならない対象に仕入れ先や顧客も含めたほうが良いだろう。

 私たちはしばしば、ああしろこうしろと“指示を出す”ことで結果が得られると考えてしまう。CEOや経営陣がそれをやってはいけないのか。夫や妻や子どもに、やってほしいことを言ってはいけないのか。

たとえ大統領であっても論理だけではうまくいかない。

 アメリカ大統領は国民にああしろこうしろと言うだけでは駄目なのか。ハリー・S・トルーマン元大統領によれば、答えはノーだ。「私はここに座って1日中人々を説得している。結局それが大統領の力のすべてだ」。

 リチャード・ニュースタットは著書『Presidential Power and the Modern Presidents(仮邦題:大統領の権限と最近の大統領)』の中で、「大統領が職務中に語るこのような言葉の中に、日の前にさらけ出された問題が見えてくる。『権限』は力を保証してはいないのだ」と記している。

 ニュースタットは続ける。「思慮分別のある大統領ならば、論理的に議論を展開できれば他にいかなる力も必要ないはずだ。アメリカでは広くそう信じられている」。しかし、たとえ大統領であっても論理だけではうまくいかない。「大統領の権限とは説得するための力である」。ニュースタットはこのように述べて、人々に大統領職の概念を再考させた。

支持を得る。人を動かす。そんな基本法則が存在する。

 説得に関する研究で有名な心理学者のロバート・チヤルディーニ博士は『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌で、「説得力を身につけることなくして、リーダーに成功はない。だが、説得力は自然科学である。多くの心理学的研究から、支持を得たり人を動かしたりするための基本法則が存在することが示されている」と述べている。

 この「自然科学」や「心理学的研究」が本書にとって飛躍的な一歩となった。説得によって人を動かし、望ましい結果を得るための方法が、科学的な根拠によって実証されたからだ。

 神経科学の分野では最近になって、意思決定をしたり説得したり、行動したりするときの脳の働きについて驚くべき事実が発見された。ようやく、外部の刺激に対して特定の反応をする理由がはっきりとわかったのである。

説得力を身に付け偉業を成し遂げるリーダーになれる。

 この本を開くことで、あなたはすでに説得を成功させる最初の一歩を踏み出している。次は、自分のオ能を活かして本書で明かされる情報を学び、応用すればよい。そうすれば見事に説得力を身に付けて、偉業を成し遂げるリーダーになれるだろう。

 成功曲線をはるかに上回る生え抜きの集団の1人になれるかもしれない。この新しい科学と心理学の研究は、人と接する方法、管理する方法、決断や行動に影響を及ぼす方法を永久に変えることになるのだ。

 ビジネス界では昔から、個人あるいは企業の成功には説得力が不可欠であることに気づいていた。「一見魔法のような説得力はいつの時代にも重要だった」と、『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌のジヨージ。W・プラットが書いた記事にある。

 「しかし、マネジメント構造のフラット化、部署を越えてのチーム作り、会社間の提携が盛んになった今、それは必要不可欠となった。リーダーであろうと個々の一員であろうと、誰もが人を動かせなければならない」。

いっそう容易に、迅速に目標を達成する力が身に付く。

 科学に基づいた新しい説得力を手に入れると、一個人としてはどのような利点があるのだろうか。

 まずは日標を達成する力が身に付く。他の人から全面的な同意を得たり進んで実行してもらったりするうえで効果の高い方法を用いるのだから、いっそう容易に、迅速に達成できるようになるだろう。

 上司や部下、部署間のつながりなど組織のあらゆるレベルで有利に人を動かすことができるようにもなる。当然のことながら、優れた説得力は公私にわたってあらゆるレベルで良い影響をもたらすはずだ。誰かと協力して、あるいは誰かを動かして、やりたいことを成し遂げるうえで優位に立てるだろう。

説得に必要な技法、リーダーの話法が誤解されている。

 説得という新しい科学を応用するとき、組織にとっての利点はどうか。南カリフォルニア大学リーダーシップ研究所の元所長ジェイ・コンガー教授の言葉を借りよう。「権力と同じように、説得力も組織内で大いに役に立つ。人々を団結させ、アイデアを前へ推し進め、改革を促し、建設的な関係を作り上げる」。

 さらにコンガーは鋭くつけ加えている。「説得に必要な技法、リーダーの話法が誤解されており、十分に活用されていない。だが、それらはかつてないほど重要になってきている」。

 リーダーの話法、すなわち説得というものが「誤解されて」いて「活用されていない」と断言されていることから、現在の説得に関する知識がいかに限られたものであるかということがよくわかる。だが、私たちに落ち度はない。たった今まで脳の機能についての科学的知識がなかったのだから。

 人を納得させて成すべきことを成す力、すなわち説得力が向上すれば、組織の効率が上がって時間とエネルギーが節約できる。波風が立ちにくくなれば、会社も組織も部署もスムーズに流れて、短い時間で多くのことを成し遂げられるようになる。

社員の意欲が上がり、業績は伸び、目標が達成される。

 きちんと立証された、科学に基づく説得力を応用すれば、各個人の実行能力を高めることになり、良い結果が生まれるだろう。社員の意欲が上がり、業績は伸び、協力が強化され、目標が達成されるのである。

 マネジャーは他の人にやるべきことをやってもらうために、8割もの時間をコミュニケーションに費やしていることがわかっている。それでどの程度の効果が上がっているのかと言えば、実はあまり大したことはない。なぜなら、私たちは「誤解していた」からだ。判断を求められるような要求や刺激に対して、脳がどのように反応するのかを知らなかったからだ。

 前にも述べたが、画期的な新知識について最も興味深いことの1つは、説得や意思決定プロセスについてこれまで信じられてきたことと真っ向から対立することである。日々、他の人を通して物事を達成することを求められていながら、多くの人は今もってどうすれば効果的に説得できるのかを皆目わかつていないのだ。

 ワトキンス教授は言う。「説得こそがリーダーシップのコアスキルだ」。一方、『The Leadership Triad(仮邦題:リーダーシップの3原則)』の著者デイル・ザンドはリーダーに厳しい要求を突きつける。「他者を動かすことができなければリーダーとは言えない」。そして、チャルデイーニの場合はこうだ。「説得力は、これまでの権力構造よりも他者の行動に与える影響がはるかに大きい」。

人を動かすための科学原理を巧みに取り入れる説得。

 なるほど。説得力はリーダーシップに欠かせないスキルであり、現在の説得方法は時代遅れで、解釈が間違っていて、十分ではないということだ。

 では、新しい方法を教えることはできるのだろうか。できるとすれば、教えられた側は効率良く効果的に説得することができるようになるのだろうか。科学界、学術研究界の答えは大きな「イエス」である。「行動科学から朗報」と『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌にある。

 「説得は人間の奥深くにある欲求に働きかけることでうまくいく。人を動かすための科学原理を巧みに取り入れることで、合意を得たり、契約を結んだり、譲歩を引き出したりすることができるようになる。相手の心の奥深くに根を下ろした欲求を願い通りに満たしてやる方法がわかれば、誰でも自分の説得力を強化することが可能である」。

 さらにチャルデイーニの文献によれば、「説得力は基本的な科学に基づく実用的で学習可能な方法である」とされる。「人間の奥深くにある欲求」と「実用的で学習可能な方法」は現在、「リアルタイム」の脳の働きを知る新しい科学、生体内神経生理学で解明されている。人間の脳が意思決定情報を処理する方法が科学的にわかっているのだ。そして、その知識を学び、応用することで、私たち自身の結果や人生、自己そのものを向上させることができるのである。

これが低いことが原因で解雇されることが明らかに。

 ビジネス界では対人関係を成功させる新しい知識が注目を浴びており、数々の書籍や学習コースが次々に生まれている。一言ですべてを語るその名は感情指数、略してEQで、感情知能指数とも言われている。これで知能指数(IQ)の高さとEQの高さは別物だということになった。するとどうだろう。企業経営者や経営陣において、lQの高い人よりもEQの高い人のほうが好結果を出すということがわかったのである。

 アメリカン・マネジメント・アソシエーションは、最近実施したビジネスリーダーヘの調査で、人々を効果的に率いていくために必要なスキルは何かを尋ねている。回答の上位2つは、コミュニケーションスキルと、人をやる気にさせる能力だった。

 これこそ私たちがやるべきこと、説得する方法ではないだろうか。興味深いことに、IQの高い人の間でもEQが欠けていると成果が上がらないことが資料からわかっている。世界的な経営幹部調査会社エゴンゼンダーインターナシヨナルの調査では、多くの人々がIQの高さで採用されているものの、EQが低いことが原因で解雇されていることが明らかになった。

 EQという言葉に含まれる意味は幅広いが、中でも重要な要素は、相手が感情に関わる情報をどのように処理して、どのような反応を示すのかを理解することである。それを知ることで、リーダーとして正しい方向へ歩み、自らのEQを高めることができるだろう。個人や会社の成功にとって、それを知ることがなぜ大切なのか、答えは明白だ。相手が意思決定の情報を処理する方法がわからなければ、その相手の意思決定を左右することなどできないからである。

望ましい結果のすべてを手に入れる唯一の方法。

 話を少し戻そう。他の人と協力して、あるいは他の人を動かして物事を成し遂げるためにはどうすればよいか。望ましい行動や結果を引き出すためにはどのような方法があるだろう。選択肢はかなり少ない。基本的に3つである。

強制する。

交渉によって結果を引き出す。

納得させて同意と行動を引き出す。

 今日のビジネス界では強制は時代遅れであり、効果もない。場合によっては、人に命令を突きつけたり、それを無理矢理やらせたりすることも不可能ではないだろう。だが、行動は起こせても、決して自発的にやるようにはならないはずだ。そもそも、前向きな同意を得ることができなければ、期待するような結果は出せそうもない。

 交渉はギブアンドテイクであり、時間のかかるプロセスだ。かなりのスキルが必要で、どちらの側にも譲歩、つまり何かと引き換えに何かを得ることが求められる。この方法では、どちらの側もいらないものを引き受けなければならないことが多い。交渉の専門家や達人は、他のどのようなやり方もなくなってしまったときにのみ、交渉するよう勧めている。

 それとは対照的に、説得は、同意、やる気、行動、望ましい結果のすべてを手に入れる唯一の方法なのである。

説得は、あの手この手の即興心理トリックではない。

 では、「説得」の不思議な力とはどういうものか。「影響」あるいは「納得」という言葉とほぼ同義語として用いられているその意味は、どのように定義すればよいのだろうか。南カリフォルニア大学のコンガー博士が、『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌の「説得に必要な技法」という論説で、最もシンプルでわかりやすい定義を示している。「効果的な説得は、説得者が問題に対する共通の解決策へと同僚を導く過程をたどる」。

 キーワードは「共通の解決策」と「過程」だ。「共通の解決策」とは関係者全員に利益をもたらすような結果を指す。「過程」という言葉は、説得がどんな場面でも利用できるような、あの手この手の即興心理トリックではないことを示している。つまり、説得は一度きりの事象ではなく、進めるにしたがって発展していくれっきとした「過程」なのだ。説得とは、人間の性質と行動の理解を深め、自然な流れに合わせて働きかけていくことなのである。

 これまで、相手から確約や望ましい行動を引き出す方法を定義するために「レトリック」という言葉が用いられてきた。アリストテレスは著書『弁論術』第1巻で、弁論術、すなわちレトリックとは「可能な限り最良の説得手段を発見すること」と定義している。そして科学はようやく突破口をもたらしてくれた。「可能な限り最良の説得手段」を与えてくれる科学的根拠に基づいた方法である。

説得は相手を操作することとはまったく逆である。

 知識を持たない人の中には、説得をバカにする人もいれば、「強引な売り込み」の類いに属すると考える人もいる。あるいは、ごまかしや詐欺に匹敵すると言う人もいるだろう。

 しかし「説得は売り込みに勝り、詐欺とは対極にある」とコンガーは述べている。金、権力、地位と同じように、説得も善悪両方に用いることができよう。だが、「共通の解決策」を求めようとするなら、説得は相手を操作することとはまったく逆である。

 脳の情報処理方法を学べば、新しい説得の技法と説得の科学が脳内部の誘導システムに沿うものであり、それに逆らうものではないことがわかってくるはずだ。相手のごく自然な脳のプロセスに沿って働きかけることは、操作などではあり得ない。

カリスマや人格に左右されるものでもない。

 説得とは、こちらが働きかけなければやらないかもしれないことをやろうという気にさせることである。説得の目的は相手の心をつかむことであり、ゆえに態度や感情に変化を起こさせなければならない。共通の解決策に向けて、相手の態度を変化させ、行動に駆り立て、心を決めさせるスキルである。相手の態度、感情、意思決定、行動を変化させることができて初めて説得できたと言えるのだ。

 『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌も独自の定義をしている。「説得は頼み込んだり、九め込んだり、操ったりすることではない。それとはまったく逆で、相手を通して物事をやり遂げる方法である。これは自分がどのような立場であっても同じことだ」。

 説得は圧力をかけることとは何の関係もないし、カリスマや人格に左右されるものでもない。それどころか、説得は正しい情報の応用であり、相手の自己誘導システムに取り込まれて働く刺激だ。

誰でも短期間でマスターできるスキルなのだ。

 説得は互いの目的や利益を達成するために他の人とパートナーを組むことである。そして、自分の思いつきや目的や夢を形ある現実のものに変えるプロセスである。さらに耳寄りな話を1つ。説得は誰でも短期間でマスターできるスキルなのだ。

 では、現在の一般的な説得方法と、思い通りに人を動かす方法を根本から変える新しい科学との違いは何だろう。本当にどこか変わったのだろうか。

 これまでに、自分自身や会社に素晴らしい結果をもたらすような、優れたアイデアが浮かんだことはあるだろうか? 人を動かして何かを成し遂げなければならなかったことは? 誰かに何かをしてほしかったことは? そういったアイデアや必要性から、常に最良の結果を引き出すことができていただろうか?

 答えがノーなら、ここであなたが結果を出すためのお手伝いをしよう。初の弁論術の研究以来2500年にわたる説得学の中から選び抜いた内容と、脳の意思決定プロセスに関する今日の驚くべき科学研究の結果を組み合わせた本書は、あなたを有能な説得者へと変えるはずだ。こちらの求めることを、相手が進んで実行してくれるような、そんな説得の達人に。

本書は手強い説得者になるための完璧な手引書である。

 本書が、説得や脳の科学に関する他の多くの優れた本と異なる点は、新たな科学についての知識を共有することと、そしてそれよりも重要なのが、その知識を実行する手続きが十分に実験され、立証されたものであることだ。本書は、意識して手強い説得者になるための完璧な手引書である。他人を自分に従わせる方法がわかれば、いっそう優れたリーダーになれる。人と力を合わせ、人を動かして結果を出すことができる。

 ここでは、意思決定がどのように行われるのかを十分に理解して、共通の成果を出すために相手の心の誘導システムを発動させる方法を学んでいこう。

 そのうえで以下のことを説明する。

効果的なプレゼンテーションの計画と構成方法。

説得力あるプレゼンテーションの実施方法。

抵抗を好機に変える方法。

応じる、行動する、「イエス」という最終決断を害易に引き出す方法。

 本書は、リーダーが説得力をうまく使いこなして結果を出すための知識、スキル、プロセスを「自然科学」的なアプローチで説明する最初の書籍である。すでに述べたが、このアプローチは以下の新たな解釈を起点とするものだ。

脳はコンピューターとは異なり、―体となって機能するものではない。

脳は論理的な機械ではない。

脳に不自然で非生産的な動きを求めることはやめなければならない。

感情が発生するのは、意織下の価値判断より前である。

説得相手を「パートナー」と呼ぶことにする。

 説得は相手と共有するプロセスなので、説得する側とされる側の目的が一致しなければならない。実際には、両者がパートナーとなり、意義のある日標に向かつて共通の意思決定と行動を生み出すことになる。

 そこで、ここからは説得しようとしている相手を「パートナー」と呼ぶことにする。2人は同じゴール、すなわち共通の解決を求めるパートナー同士だ。

 著者である私は、説得力を身につけようとするあなたのパートナーとして最大限の努力をしよう。私個人の経歴には、心理学の学位、経営コンサルテイングと研修の実績、人を動かして結果を出す方法に関する生涯の研究がある。

 本書で取り上げる例の多くは、巨大金融機関の重役、研修会社の社長、『フォーチュン』誌上位500社にランキングされている企業の経営コンサルタントとしての、私個人の経験に基づいている。

高度な説得力を身につけるとしたら今しかない。

 どの例も実話である。実際に起きたことだ。願わくば、こうした事例をもとに、あなたがあなたなりに同じような結果を出すことができればと思う。

 本書が、あなたにとって極めて貴重な1冊になる理由がある。それは、ジェイ・コンガー博士の言葉によく表れているが、明確で簡潔な答えが本書には用意されていることだ。

 「説得に必要な技法、リーダーとしての話法が誤解されており、十分に活用されていない。ビジネスに携わる人間が高度な説得力を身につけるとしたら、それは今しかない」。

 あなたを説得力探求の旅へとお連れしよう。古代ギリシャからローマ帝国へ、幾千年もの心理学とあてずっぽうの説得学、そして今日の神経科学の大発見へ。そしてそれをもとに、簡単に学べる、説得を成功させるプロセスをお教えしよう。それでは、旅を始めようではないか。

目次・章立て。

まえがき
【1P】「イエス」を引き出すための"完壁な"説得術

Chapter1 説得力が成功への道を切り開く
第1章 説得術が持つ脅威のパワー
【14P】説得こそあらゆる成功の鍵である
【16P】人類の歴史は一か八かの試行錯誤の歴史だった
【18P】誰が説得力を必要としているのか
【19P】説得術は今や自然科学となった
【20P】説得力は何を可能にするのか
【20P】説得力は組織をどう変えるのか
【22P】EQはなぜもてはやされるのか
【23P】「イエス」へとつながる 3つの選択肢
【24P】求められるべき解決策とは
【24P】説得は、相手を丸め込む業ではない
【26P】科学の力があなたを説得の達人にする
【27P】説得する相手は「パートナー」である

第2章 勝者と敗者を分かつもの
【30P】歴史とは説得の歴史である
【31P】説得力を欠いたカールソンの悲劇
【32P】2兆ドルの大発見は、なぜ日の目を見なかったのか
【34P】説得術の天才たち
【39P】あなたが真に成功を望むなら

Chapter2 明らかにされた脳の仕組み

第3章 脳の働きを探る長い道のり
【44P】説得術の繁明期
【45P】世界で最も主要なスキル
【49P】飛躍的に進んだ脳と説得力の研究

第4章 脳は感情で考える
【52P】謎に包まれる脳の仕組み
【53P】突破口
【54P】リアルタイムで脳を観察できる新技術
【55P】脳の情報処理を覗く窓が聞かれた
【56P】新たな科学分野が次々に誕生している
【57P】新発見が明らかにした「大いなる過ち」
【58P】古い観念はなかなか廃れない
【59P】感情で考える仕組み

Chapter3 意思決定のシステム

第5章 意思決定の源泉
【66P】「意志」は思考、行動を管理する中枢ではなかった
【68P】成功も失敗もその理由がわからなかった
【68P】新たな知識が驚くべき効果をもたらす
【71P】「理性は小さな馬、感情は巨大な像だ」
【74P】大脳皮質より大きい扁桃体の影響力
【76P】説得はワザから科学になった

第6章 説得の原動力
【80P】レトリックという名の説得力
【81P】説得の原動力 – エ一トス、ロゴス、パトス
【83P】パートナーの反応には、どういう意味があるか
【84P】ほとんどの人が反射モードだと考えていい理由
【85P】「考えること」は、なぜこんなにも回避されるのか
【87P】気楽にやれば、結果はついてくる

第7章 7つのトリガーが無意識の決断を導く
【91P】人生の課題は決して尽きることがない
【92P】「心のトリガー」が我々を救う
【94P】無意識による決断は、トリガーが引き起こす
【97P】人生を変える 7つの トリガー

Chapter4 イエスを引き出す7つのトリガー
第8章 「友情」のトリガー
【102P】最も強力かつ重要なトリガ一
【103P】「イエス」と言ってもらうための一番簡単な道
【103P】行き当たりばったりのアプローチ
【106P】相手がどんな人間かを知る方法
【108P】友情のトリガーの効果的な働かせ方
【109P】どんな服装をするかが、重要な理由
【110P】友情のトリガーの重要ステップ – ミラーリング
【116P】強固な基盤を築くには

第9章 「権威」のトリガー
【119P】考えることなく無意識に従うトリガ一
【120P】決断につきもののリスクを減らす
【120P】簡単に素早く応諾を得られる
【121P】強過ぎる力が両刃の剣になることもある
【124P】信頼される情報源とは
【125P】権威のトリガーを自分のものにするには
【133P】工ートスはあなたの貴重な財産となる

第10章 「一貫性」のトリガー
【136P】一貫性と調和の命令には逆らえない
【137P】感情の記憶が方向を決めている
【138P】心の誘導システムは、どんな期待を要求するのか
【139P】扇桃体が商品を買えと命令する
【140P】エンターテインメント業界で発展したテクニック
【141P】一貫性のトリガーを応用するには
【144P】相手は何に一貫性を感じているか
【149P】誰もが楽に決断したがっている

第11章 「交換」のトリガー
【152P】社会が生み出した恩義のネットワーク
【153P】お返しをするのに理屈はいらない
【153P】「無料」のプレゼントで購入を促す
【154P】何倍にもなって返ってくる
【155P】与えれば、与えられる
【157P】大きな見返りを得るためのアプ口ーチ
【160P】すべての人に贈り物を

第12章 「対照」のトリガー
【162P】「違い」を明らかにすればいい
【163P】認識こそが現実である
【164P】適応レベルの設定で、相手の認識を変えられる
【166P】すべての刺激は、意味のある順番に並べられる
【168P】違いが際立つプレゼンテーションとは

第13章 「理由」のトリガー
【171P】相手がすんなり応じる簡単な方法がある
【172P】相手が納得することが、絶大な効果につながる
【176P】納得してもらえる理由を考える

第14章 「希望」のトリガー
【181P】決断と行動に最も働きかけられるトリガ一
【183P】「希望」を土台にして、ビジネスは成り立っている
【186P】相手は何を望んでいるのか
【190P】希望のトリガーで確実に成果をあげる方法
【192P】もっと良い方法があると提案しよう

Chapter5 説得のゴール

第15章 望み通りの成果を得るには
【198P】あなたはゴールを正確に設定しているか
【200P】結果を得るために求められること

第16章 説得のためのコミュニケーション
【205P】コミュニケーションの重要性が理解されていない
【206P】大事なのは、何を伝えるかではない、どう解釈するかだ
【209P】テレビではコミュニケーションが成立しない理由
【209P】効果的なコミュニケーションのための2つのスキル
【210P】相手についてできる限りの情報を得る
【210P】良いタイミングで的確な質問ができるか
【211P】情報を入手する 6人の召使い
【213P】バリュープロブアイリング - 相手は何を大切にしているか
【215P】積極的に聞く技術
【216P】ミラーリングとメラピアンの法則

第17章 説得に生かすプレゼンテーション
【222P】あなたの望みを相手に伝える段階 - プロポーザル
【224P】最大限の効果が発揮されるプレゼンテーションとは
【227P】プレゼンテーシヨンの枠組み作り
【233P】プレゼンテーションの舞台効果をあげる

第18章 反対や抵抗は歓迎すべき要素である
【240P】ネガティブな要素もポジテイプに変換できる
【242P】反対は、絶好のチャンスでもある
【245P】リーダーが陥る罠

第19章 コミットメントを確保する
【247P】まだ終わりではない
【248P】望み通りの果実を得るための最後のー苦労
【250P】相手の最終的な決断を手助けする
【252P】決断を促すのではなく、意見を求める

あとがき
【258P】人類の長い歴史が生み出した研究成果

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著者紹介。

 ラッセルグレンジャー

 25年以上も神経科学をビジネスに応用する研究をしている世界的権威。最新の脳の研究を元に、ビジネス界で職人技のように扱われる、説得、営業、交渉などのテーマを科学的に成功させる方法を開発。

 シティ・グループやプルデンシャル、AT&Tなどとパートナーシップを組んで神経科学を使った説得術を研究・研修して、彼の運営する研修会社は米国だけでなくヨーロッパ、オーストラリア、シンガポール、ニュージーランド、香港にまで展開。 他にもGE、ヒルトンホテル、ソニー、AMEX、フェデックスなど世界的な優良企業がクライアントに名を連ねる

 スモールビジネストレンドビジネス・ブック・オブ・ザ・イヤー。本へのコメント“営業、マーケティング、説得と影響力などに関して、断然、実用的な本。この本を特徴づけているのは、とてもシンプルなテーマと、実践に使える事だ。”

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2014-06-21 | Posted in 未分類No Comments » 

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