NO!ビジネス心理戦で絶対に負けない超交渉術

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NO!ビジネス心理戦で絶対に負けない超交渉術

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誰もがそう考える。だがこの考えを改める必要がある。

 「イエス」。これほどすばらしい言葉がほかにあるだろうか。「イエス」は相手を喜ばせる。要求に応えるということだからだ。商談がまとまり、懸案が解決。みんな満足して、シャンパンの登場となる。一方、最悪の言葉といては「ノー」だろう。「ノー」は人をいらだたせる。拒絶や強硬な態度を意味し、話し合いは中断。このひと言がすべてを台無しにする。

 譲歩と思い込みの世界では、だれもがそう考えている。だが、この考えは改めなければならない。交渉の場では「イエス」が最悪の言葉。失敗したらどうしよう。契約が成立しなければどうしよう。そんな気持ちの表れなのだ。イエスと言うと、相手を喜ばせ、急いで交渉を進め、さっさと譲歩し、多くの場合、どんな契約であれ、手を打つことになる。反対に、一番いいのは「ノー」だ。あなたはノーと言い、相手にもノーと言わせるのがよい。「ノー」はあなたを自由にし、安全な立場を確保してくれる。

ある日、営業の電話をかけたところ、思わぬ展開に…。

 ビルの例を考えてみよう。ビルはミッドウエスト・ウィジェット(もちろん本書ではすべて仮名を使う)の優秀な営業マン。デュモンを担当している。デュモンは7年来の取引先で、これまで通りの関係がこの先も続くものと思われた。ミッドウエストの製品は性能がよく、価格も適正だ。ところが、ある日、ほんの形だけのつもりで営業の電話をかけたところ、思わぬ展開になった。

 新しい仕入れ担当のスティーブがビルにこう告げたのだ。「申し訳ありませんが、仕入先を変えようと思います。いつも一方的な御社とはこれ以上のお付き合いはしかねまして。以前から弊社との取引を希望していた業者が3社ありますので、そのいずれに決めるつもりです」

 値引きをさせようとしているな。ビルは即座にそう考えた。営業マンならたいていそうだろう。そして、すぐに譲歩するしかない判断した(思い込んだ)。価格を下げて取引を続ける。ビルはそろばんをはじき始めた。継続のためには、最低でもどれだけの値引きが必要か。自分の首をつなぐには、値引きをどこまでにとどめるべきか。

「どんな価格提示でも継続は難しいかもしれません」。

 いくら値を下げれば取引を続けてくれるのか。ビルはほとんど無意識にスティーブに尋ねた。「やった」。スティーブはそう思う気持ちをなんとか押し殺した。こんなに簡単に思い通りになるとは。「値引きのお申し出はありがたいのですが、どんな価格を提示されても継続はむずかしいかもしれません。でもご意向に沿えるよう、会議に諮ってみます。単価14セントではいかがでしょう」

 デュモンを失うなんて。履歴書を書いて家を売りにだしたほうがいいかもしれない。ビルはすっかり混乱してしまった。気持ちが乱れ、心臓が激しく鼓動している。だが、「少し時間が欲しい」と何とか頼むと、スティーブもいいだろうと言ってくれた。ビルは営業部門のスーザンに電話をし、デュモンとの関係が新たな局面を迎えたことを伝える。取引を続けるには大幅な(14セント)値引きをするしかない。これを飲まなければ終わりだ。

 そう言われ、スーザンも混乱した。ビルの失敗は、すなわちスーザンの失敗だ。ビルがスティーブの言葉をそのまま受とったように、スーザンもビルの言葉をそのまま受けとった。「ビル、12セントではどうかしら」。スティーブはきっと吹っかけているから、交渉の余地はあるだろうと2人は考えている。デュモンではどんな話になっているのかわからない。わかっているのは、この世は「ウィン・ウィン」の世界、つまり双方の利益を図る世界だということ。頼まれたらそれに応じ、「よし、決まる」となる世界だ。

今も毎日数え切れない人がこの手にひっかかっている。

 私はこれを「譲歩・不安型交渉」と呼んでいる。スティーブはビルとスーザンの失敗を恐れる気持ち(顧客を失いたくない)につけこんでいる。いや、本能的にイエスと答え、ノーとはなかなか言えない点を利用していると言ったほうがいいかもしれない。これは大昔からある手だが、今も毎日数え切れないほどの人がこの手にひっかかっている。

 私は「ノー」を基本とする交渉術を教えている。交渉では「ノー」は現状維持を意味するにすぎない。14セントの値引きを求めるスティーブには「ノー」で応じればよい。仕事のキャリアの心配をし、一時的な感情に振り回されて判断するのではなく、いったん「ノー」と答えてから、事実に基いて、どれだけ値引きするのか・しないのかを決定すればよいのだ。

 本能的にイエスと言うと(『ハーバード流交渉術 イエスと言わせる方法』やこれに類する、譲歩や思い込み、不安、感情を基盤とする交渉術ではイエスをいかに引き出すかを説いている)、確実に立場が悪くなる。一方、「ノー」なら交渉時の精神的プレッシャーから解放され、自由で安全な立場に立つことができる。まず「ノー」で足場を固めてから、最善の方法を考えればよいのだ。

もしビルが「ノー」システムを使っていたら……。

 具体的にはどういうことか、ビルの例で簡単に説明しょう。もしビルが「ノー」システムを使っていたら、14セントの値引きというスティーブの爆弾発言を聞いても、少しもあわてたりしない。感情に振り回されず、体系的に対応するからだ。

 ビルはミッドウエストの使命と目的についてよく考えてみる。そして、値引きを求められたからといって経営陣が大幅譲歩に賛同するとは考えにくい、ミッドウエストの要求は飲めないと判断する。

 ビルはスティーブにいくつか質問をする。仕入先の変更がデュモンにとって何を意味するのか。スティーブにビジョンをもたせるための質問だ。当社のどこに不満があったのか。不良品がどれほどあったのか。デュモンは試してもいない製品を仕入れ、いったいどれだけのリスクを負えるのか。

この世界にはそう考える人が多いが、そうはならない。

 こんな質問をし、回答を聞いて書きとめる。もちろんビルはすでに正解を知っている。自社製品の不良率も、デュモンがどれだけのリスクを負えるかも、ライバル他社の製品の品質や価格も。

 こうしてビルは交渉のための基盤を固め、依頼に対して「ノー」と言う。ノーと言うと相手が去っていくのではないか。ビジネスの世界にはそう考える人が多いが、そんなことにはならない。私を信じてほしい。デュモンがこれといった理由もないのに7年もの間ミッドウエストから仕入れるわけはない。最終的にミッドウエストはいくらか譲歩することになるかもしれないし、ならないかもしれない。

 いずれにせよ、決定は思い込みや感情ではなく確かな情報に基づいて下される。仕入先の変更をスティーブがどうとらえているのか、そのビジョンが関係してくる場合もある。ビジョン次第では価格の引き上げもあり得る。そんなケースを私はいくつも知っている。

あらゆる交渉で指針となり、窮地に立つのを防ぐ。

 「ノー」が基本の交渉術は、交渉のあらゆる段階でビルの指針となり、窮地に立つのを防いでくれる。これはだれもが活用できる交渉術だ。私生活でも仕事でも、人は日々さまざまな約束を交わしている。つまり、「交渉」しているのだ。

 それらの約束は、大きなものから小さなものまで人生にとても大きな影響を及ぼしている。人生を支配していると言ってもいいくらいだ。だが、自分が今何をしているかをわかって交渉に臨む人はほぼゼロ。適当に済ませてしまうことがほとんどだ。少なくとも私にはそう見える。

 交渉に備えるなどまずあり得ないことで、交渉しているという自覚さえないこともある。そして後の祭りとなる。よく考えず、どんな結果になるかわからないまま、さっさと約束や決定をし、あとであわてるという経験を繰り返していないだろうか。

これは交渉なんだ。彼らは何かを求める。だから…。

 「なんてことだ、どうすればいいんだ」。交渉が思わぬ方向に進んでも平然としている人がいたら、会わせてほしい。

 私の友人のラルフはディベロッパーで、カリフォルニアのプロジェクトに全財産をつぎ込んだ。だが、この地域では天然資源の保存や保護がコミュニティーの重要課題で、議会と対立することになった。ラルフにとって議会は手ごわく、負かすなど無理な話だ。裏庭のデッキで沈んでいく太陽を見ながら2人でカクテルを飲んでいると、ラルフが悩みを打ち明けた。議会は彼を廃業に追い込もうとしているというのだ。

「ラルフ、向こうは何を求めているんだ」

「俺を苦しめたいんだ。そこから追い出そうとしているんだ」

「いや、まじめな話、彼らの要求は何なんだ」

「えっ、どういう意味だい」

「これは交渉なんだ。彼らは何かを求めている。だから行動を起こしている」

彼が問題を抱え、議会との交渉を嫌ったのも当然だ。

 ラルフはじっと考えた。だが、さっぱりわからないと言い、あれこれ推測し始めた。しばらく聞いてから、私は家のなかに入って紙をとってきた。そして計画を練った。ラルフの開発の長期的目標は何か。どんな責務を果たしていかなければならないか。解決すべき問題は何か。コミュニティーはこの開発に何を望んでいるか。「彼らの世界」は何を要求しているのか。

 ラルフは自分が何を求めているかはわかっていた。だが、議会の求めているものはわからない。状況が少しでも複雑になったら、どうしてよいかもわからない。彼には交渉を進めるための指針がなかった。よりよい決定を下すには、まずしっかりとした計画を立てておくことが必要だ。

 ラルフは交渉を一連の決定としてとらえたことがなく、そのときどきの気分(興奮や、おそらくの不安)に従って交渉をしていた。根拠のない思い込みもあった。彼の水晶玉、つまり彼の判断のよりどころはすっかり曇っていて、これならない方がまだましだった。彼が問題を抱え、議会との交渉を嫌ったのも当然だ。

自信をもって巧みに話し合いを進めるようになった。

 交渉とは決定を重ねることであり、「ノー」を有効に使えることを知ったラルフは、自信をもって巧みに議会との話し合いを進めるようになった。そして、開発の終了時にはほぼすべての人が満足をしていた。本書では、私が20年前にラルフに伝え、今なおクライアントに伝えている、この交渉に必要な考え方を学んでいただきたい。交渉には次のようなものも含まれる。

社運を賭けた数百万ドル規模の複雑な商談を進める。

キャリア形成の計画書を上司に提出する。

志望大学から入学許可を得る。

プール工事の請負業者(あるいは家主)とのもめごとを解決する。

子どもを床に就かせる。

夏季インターンの仕事を得る、就職する。

話の展開が予想できない保護者面接で、うまく話し合いを進める。

仕事も私生活も混乱とは無縁に。そのための交渉術だ。

 本書で学ぶ交渉術はどんな場合にも使える。期待や祈りは不要。不安やパニックも必要ない。自分の置かれた状況や次に何をすべきかを常に把握しているので、勝手な思い込みで不要な譲歩をしたりしない。無駄な回答や申し出をして、すぐに後悔することもない。あなたと他人との対立や問題はすべて交渉であり、計画を立てて確かな決定を下していると適切な対応ができる。

 仕事でも日々の生活でも混乱とは無縁でいたい。そのための簡単で優れた方法、それが「ノー」が基本の交渉術だ。明確な原則が示されるので、それを順に実践するだけ。母親、父親、子ども、起業家、プロの交渉担当者、CEO、教師、不動産業者、銀行家、政治家、大工、外交官……。これはだれもが使える交渉術だ。

 交渉というと厄介な仕事とか悪夢といったイメージがある。でも、その考え方を少し(いや大きく)改めて、交渉をやりがいのあるものとして楽しんでほしい。「ノー」と言えば、交渉を自分の思う方向に進めやすい。「なんてことだ、どうすればいいんだ」。こんな思いをすることはもうない。心配は無用。守りは固められたのだ。

いとも簡単に目的を果たし、毎日交渉相手を陥れる。

 「ノー」がいかに有効かを理解するには、まず、「ノー」は現在主流となっている譲歩・思い込み型の交渉を否定するものであることを理解しなければならない。そう聞いて、「えっ?」と思った人は(実際、「イエスと言わせる」ことを望まない人がいるだろうか)あと少しだけおつきあい願いたい。

 この交渉術は「ノー」が基本といっても、単にノーと言うだけのものではない。これは交渉のために新しいパラダイムであり、生活の場であれ仕事の場であれ、常識的にも、知的にも、実際敵にも筋の通ったものとして適用する。

 あなたがあれこれ思い量り、要求されたらそれに応じるタイプなら、毎日でもランチに誘いたいというビジネスは多いだろう。私もその一人だ。彼らは高等戦略をもち、譲歩とも思い込みという弱気の態度につけこむことだけを狙っている。

 彼らはいとも簡単に目的を果たし、毎日のように交渉相手とその会社を陥れていく。本書を書いたのは、あなたに形勢を逆転してほしいからだ。「ノー」とひと言言えば、スティーブのような例だけでなく、相手がどんな戦略にでようと優位に立つことができる。この方法で成功したクライアントの実例も紹介するので、「ノー」の威力をわかっていただけるはずだ。

ある晩、3歳のリリーはベッドに入るかどうかを……。

 説明を始めるにあたり、まず、孫のリリーのこんなエピソードをお楽しみいただきたい。ある晩、3歳のリリーはベッドに入るかどうかをめぐって母親と交渉をしていた。そして、ノーを5回言って要求を認めさせた。ノーを言うことも言われることも恐れず、彼女はひたすら交渉を続けた。「ノー」で成功するには、粘り強さが重要だ。

 親である人なら、子どもは交渉の最後ではなく最初に「ノー」と言うことをご存じだろう。だが大人はこの言葉を恐れるような条件づけをされている。そこで私は、丁重にノーと言い、落ち着いてノーを受け止め、相手にノーを促すだけでどんな交渉においても優位に立てることを聴衆やクライアントにゆっくり注意深く説明する。

 相手にノーと言っても構わないと伝えると、両者を隔てる壁が一気に低くなり、有益な話し合いができる。その威力は驚くばかりだ。ノーと言うことを認められると、張りつめていた気持ちが和らいでプレッシャーから解放されるのだ。

これを伝えておくのだ。こう切り出すとよいだろう。

 子どものことに話を戻そう。たとえば、あなたが子供のことで教師と面談するところとしよう。ジョニーは自制心がなく、目上の人を敬う気持ちが欠けている。むずかしい面談になりそうで、厄介な事態にならないとも限らないジョニーとはすでに話をし、どうやって彼を正しい方向に導いていくかも考えている。

 教師にもそれを手助けしてほしいと考えて、ここへやってきた。これは明らかに交渉であり、教師には初めに次のことを伝えておかなければならない。すでに方法を考えていること、そして自分の考えが間違っていると思ったら遠慮なくそう言ってほしいこと。これを伝えておくのだ。こう切り出すとよいだろう。

 「ジョニーは落ち着きのない子で、どうすればよくなるか考えてみました。でもその方法がよくないとお考えでしたら、遠慮なくそう言っていただき、先生のお考えをお聞かせください。私の見た感じでは……」

あなたが教師の側なら、初めにこう言うとよいだろう。

 「ノー」と言うようにはっきり伝えておくと、教師は気持ちが楽になり、必要なら、ジョニーの実際の様子と話してくれる。「ノー」を促す場合は本気でなければならない。学校の実態を知って驚くことになるかもしれないからだ。あなたが教師の側なら、初めにこう言うとよいだろう。

 「スミスさん、あなたのことはよく存じ上げませんが、ジョニーのことはよくわかっています。良いお子さんです。でも教師になって23年になりますが、彼の行動を見ていると、ときおり疑問が生じます。ちょっとお尋ねしてもいいでしょうか。誤解があればそうおっしゃってください」

 これも微妙な言い方だが、ノーを促している。そして、教師も本気でこう言わなければならない。「ノー」と言っても構わないと伝えられると、親も教師も解放された気分になる。壁が即座に低くなり、問題解決に向けた協力体制が作られる。

こう言うと、相手は喜んで応じてくれるはずだ。

 今度はビジネスの世界に話を戻そう。あなの会社は以前結んだお粗末な契約に悩まされている。出荷のたびに損がでるのだ。何か手を打たなければならず、相手企業の「トップ」に電話でこう伝えるのが妥当と思われる。

 「弊社の交渉は失敗でした。御社は当時、たぶんお気づきだったでしょう。私は今ようやくそれを悟りました。このままの状態を続けるわけにはいかず、お手上げ状態です。契約の見直しをお願いできませんでしょうか。一度お話をさせていただきたいのですが」

 こんな電話をかけるのはだれだってご免だろう。あきれた話だという人もいるだろう。だが状況をありのままに伝えるこのやり方がいちばんの安全策なのだ。「以前の担当者が敷いた破滅への道をこのままたどるわけにはいきません。解決法が見つかるはずです。話をさせてください」。こう言うと、相手は喜んで応じてくれるはずだ。取引を続けるつもりなら、彼らにとってはそれがいちばんの方法である。

よい交渉とはよい決定を下すことに他ならない。

 私が「ノー」の力を強調するのは、よい交渉とはよい決定を下すことに他ならないことをぜひ伝えたいからである。「ノー」はどんな交渉の場でも考え方の切り替えを可能にし、よい決定へと導いてくれる。この原則に従って交渉を始めると、保護者面接でも、赤字の出荷についても、うまく話を進めることができる。

 「ノー」は譲歩しないということではない。この点ははっきりさせておきたい。逆に、心を開くということ、素直であるということだ。「ノー」を促すと、交渉の場にいるすべての人にこう伝えることになる。私たちは大人なのだから合理的な話し合いをしよう、あわてず行こう、失敗を恐れるのはやめよう、と。正しくなくても、とびきり優秀でなくても、強くなくても、手ごわなくてもいい。

 無難さを求め、交渉相手に気に入られたいと考えていると、お粗末な(そして間違った)決定を下すことになるが、ノーならそれを防ぐことができる。「ノー」はみんなにこう伝えている。イエスと言わせようと考えていると、急いで判断を下してしまう。それは避けよう。リラックスしていこう。お互い、相手を陥れようという気などないのだから。

あらゆる交渉でこの魔法のような力に今も驚かされる。

 「ノー」が壁を低くしてその場の雰囲気を和らげるなんて、とても信じられない。そう思う人は、試してほしい。このページに印をつけ、ノーを使った簡単なテストをする機会を得るまで(家庭、オフィス、学校、教会など、どこれでもよい)、あるいはそんな機会を作りだすまで、本は開かない。

 テストは簡単。オフィスの休憩コーナーがどこかで、だれかに何かをしてほしい、あるいは、何かに賛同してほしいといった依頼を受けたとき、また逆に、あなたがこうした依頼をするとき、次のように言うのだ。「ジェーン、ぼくにはそれはできない。でも言ってほしいんだ……」。また、こんなふうに言ってもいいだろう。「僕の忠告が役に立たないようなら、そう言ってほしい。気を悪くしたりしないから。本当に大丈夫だから、ノーならノーと言っていいんだ」

 その結果はすぐに感じとることができるだろう。丁寧な「ノー」は人の感情を害さない。それどころか、人の気持ちを楽にする。大人らしい対応を(子どもからも)引き出し、よい決断を下すことを可能にする。長年コーチングをし、あらゆる種類の交渉に関わってきたが、「ノー」の魔法のような力には今も驚かされる。

欲しいというどれほど気持ちが危険なことかわかる。

 私たちはノーという言葉を恐れることを身につけてしまったが、ノーは、実は私たちの交渉法を永遠に変える言葉なのだ。「ノー」と言うには、明確な使命と目的をもつことが必要である。この考え方はビジネスの世界にもちろんしっかりと根づいている。だが本書で説明する「ノー」システムでは、少し違うことが求められる。使命と目的はあなたの側ではなく相手の側に立って設定しなければならない。

 本書を読むと、欲しいという気持ちが危険なこともわかるだろう。この取引が必要と考えてはならない。必要と思うと余計な譲歩をすることになるからだ。「ノー」は、ネゴシエーターとしてのあなたを一夜のうちに良い方向に変える。相手にビジョンをもたせるという考え方(「デュモンは試してもいない製品を仕入れ、いったいどれだけのリスクを負えるのか」)、本当に有効なアジェンダの決め方、よい質問の仕方、回答の聞き方なども、きっとあなたを変えるはずだ。

 あなたはどちらがよいとお考えだろう。正しい決断と動揺。自信と必要。よい質問と根拠のない思い込みや期待。自分でコントロールできる行動に集中するのか、自分ではコントロールできない結果を追い求めるのか。「ノー」と言うのはむずかしい話ではなく、それができれば、簡単に望み通りの結果を得ることができる。

私は学んだ。システムなしに安全な飛行はできない。

 交渉のコーチングを始めるずっと前に、私はパイロットとして空軍で働き、その後民間に移った。複雑な動作をきちんとコントロールして実行するにはシステムを利用することがいかに重要かを、私はこのとき学んだ。システムがなければ安全な飛行はできない。

 ジェット機に登場したとき操縦室の中をのぞいたことがある人なら(みんな一度はのぞいてみるだろう)多分、パイロットがプラスチックのカードに書かれたチェックリストの確認をしているのを見たことがあるだろう。

 こうしてシステムを点検し、作動させるのだ(自家用機に乗って、パイロットがエンジンをかける前にチェックリストの確認をしなければ、すぐに降りた方がいいだろう。冗談ではない。命あっての物種だ)。

私は今もこれをつくって交渉に臨んでいる。

 少し前、交渉研究家を自称するクリーブランドの弁護士が私の最初の著作『交渉は「ノー!」から始めよ』を読み、ノートルダム大学の学生である娘にそれを送った。彼女は本を気に入って私のトレーニングプログラムに参加。栄えあるホワイトハウスのインターンをめざしてコーチングを受けた。

 準備に際して重要だったのはワシントンで行われる面接のためのチェックリスト。その大切な日に彼女はワシントンに飛び、面接にあたってチェックリストを活用し、その場でインターンに決まった。私は驚きもしなかった。彼女のようなケースはごまんとあり、だから私はパイロットだったころと同じように、今もチェックリストをつくって交渉に臨んでいる。

 交渉は複雑で、いろんな要素がからみあっている。チェックリストがあるとそれをうまく管理して相手より優位に立つことができ、平静でいられる。本書でもチェックリストを使い、交渉ではそれをどのように活かすのかを説明しよう。そして最後の章では私の世界中のクライアントが使っている交渉のためのチェックリストとログの「簡易版」を紹介する。

実践のための様々なノウハウやツールも用意している。

 また、本書で述べた簡単な原則が実際に効果を上げるかどうか確認するためにどんな「テスト」をすればよいかも随所で述べている。休憩コーナーで「ノー」を試してみることは、すでにお話しした。あれがテストだ。

 リスクを伴わない状況のなかですばやく手軽に試す方法を他にも多数紹介しよう。これで大失敗をすることはないだろう。ちょっとした痛手を負うことはあるかもしれない。だが、そんな場合でも、「ノー」が効果を上げるとか、どんな質問にアジェンダが有効かといったことを学べるはずだ。

 本書を読むと交渉に関する考え方がすっかり変わるだろう。「イエス」は敬遠、「ノー」は歓迎。そして、実践のためのさまざまなノウハウや実際的なツールも本書は用意している。学生、ビジネスマン、専門家、親、子ども、自宅所有者、家主、借家人、雇用者、被雇用者、債務者、債権者、バイヤー、売り手。交渉に関わるすべての人にこのシステムは役立つ。

 ではそんな本書の中身を見てみると………。

目次・章立て。

目次・章立て
プロローグ
最高の言葉 ……… 8
顧客を失う不安が「イエス」と言わせる ……… 10
あなたは自覚のないまま交渉している ……… 11
「ノー」は交渉の流れを変える ……… 12
「ノー」は新しい交渉のパラダイム ……… 13
「ノー」は交渉の当事者を解放してくれる ……… 15
交渉を決定に導く魔法の言葉 ……… 17
だれでも実践できる交渉システム ……… 19

Part 1 ジェットコースターを止めてくれ、私は降りる
気持ちをコントロールする ……… 21
獲物を追い求める人間の本能 ……… 22
「欲しい」という気持ち を見せたら、終わり ……… 23
この買い物は必要、それとも必要でない? ……… 24
「欲しい」が顔に表れると不利になる ……… 26
喉から手が出ている人 ……… 27
おいしいリンゴを食べても顔をしかめよう ……… 29
契約を急いではならない ……… 30
エジソンの 沈黙のプレゼンテーション ……… 31
優秀な車椅子の保険外交員 ……… 33
飛び込み営業で成約するコツ ……… 34
拒絶されることを恐れてはいけない ……… 36
功名心のある人間に交渉させるな ……… 38
譲歩してうまくいくケース、いかないケース ……… 39
あなたの 「望み」をはっきりさせよう ……… 40
「必要」なことははっきり言おう ……… 42
さえない見た目で信頼される ……… 43
だれもが認められたい ……… 44
自分より下の相手を見る と、安心する ……… 45
自分をさえなく見せて、相手を味方につける ……… 46
最大の強みが 最大の弱みに変わるとき ……… 47
攻撃手人物への対処法 ……… 48
完璧な交渉はあり得ない ……… 49
欠点を見せて場の空気を和らげる ……… 51

Part 2 結果を出したい?
コントロールできるものに意識を向ける——それは自分自身 ……… 53
ゴールを設定してはいけない ……… 54
結果は考えなくていい ……… 55
失敗は失敗、成功も失敗? ……… 57
コーラ売りのアルバイトに学んだこと ……… 58
甘い期待をいだくのは失敗のもと ……… 59
あなたはベビーシッターと交渉している? ……… 60
就職活動は交渉の一環 ……… 61
非建設的活動に打ち込むと楽しい理由 ……… 63
交渉に「終わり」はない ……… 64
交渉における悪い習慣を断つ ……… 65
繰り返すことで習慣になる ……… 66
日々の活動を記録するだけでいい ……… 67

Part 3 優位に立つなら返事は「ノー」
どうして「イエス」が厄介で、「たぶん」が最悪なのか ……… 70
だれでも 「拒否する権利」をもっている ……… 72
断られた家を再訪して起こったこと ……… 73
「ノー」に対する免疫力を上げる ……… 74
もし「ノー」と言えば嫌われる? ……… 75
時間稼ぎは時間の無駄 ……… 76
「たぶん」は人を振り回す ……… 78
「イエス」にはなんの意味もない ……… 79
「イエス」に期待してはいけない ……… 80
「イエス」を巧妙に使う ……… 81
「タイガー・トリック」とは何か ……… 82
こうして「ノー」を引き出す ……… 83
アメリカ人は交渉のやり方を知らない ……… 84
事例:「ノー」で就職を勝ち取った学生 ……… 85
「ノー」と言っても交渉は決裂しない ……… 87
「ノー」は交渉をスムーズに運ぶ ……… 88
お互いの理解を深める方法 ……… 89
関係維持を最優先してはいけない ……… 92
相手の策略に動揺しない ……… 93
友好関係は交渉の邪魔になる ……… 94
相手を翻弄する人間に気をつけろ ……… 95
あなたは友人に「ノー」と言えるか ……… 96
好かれるより尊敬される人間を めざす ……… 97
ビジネスは決断の連続 ……… 99
部下の間違った決断をどうフォローすべきか ……… 100
過ちに気づいたら次の決断をすればいい ……… 102
「ノー」と言うだけでタフネゴシエーターになれる ……… 104
どんな相手にも正直に「ノー」と言おう ……… 104

Part 4 史上最強の交渉術
相手の世界に根ざした使命と目的をもつ ……… 107
顧客第一主義の企業だけが生き残る ……… 108
交渉する前にあなたがしなければいけないこと ……… 109
自分に何ができるかを伝える ……… 113
使命と目的を必ず文字にする ……… 114
使命と目的をもたないと、どうなるか ……… 115
使命を目的を活用する ……… 117
相手の脅しや要求に屈しない ……… 118
使命と目的が会社を変える ……… 119
使命と目的がはっきりするまで交渉しない ……… 120
顧客メリットをどのように実現するのか ……… 121
子どもに使命と目的をもたせることはできるか ……… 123
ビジネス戦略を子育てに応用する ……… 124
部下の交渉を台無しにする無能CEO ……… 125
相手に焦点を当てて相手への責任を考える ……… 126

Part 5 クルーザーを手に入れるには
ビジョンが決断を後押ししてくれる ……… 130
ビジョンの力で 買う気のない人をその気にさせる ……… 132
ビジョンとは何か ……… 134
伝わる話し方、伝わらない話し方 ……… 135
ビジョンをもてば、欲しいものも手に入る ……… 136
ビ ジョンが抜けると、うまくいかない ……… 138
事例:交渉のイロハを知らない人たち ……… 139
安易 な妥協は自分の首を絞めるだけ ……… 141
あなたは問題を作りだしてはいない ……… 144
事実を押しつけることはできない ……… 145
だれのためのプレゼンテーションか ……… 146
質問で ビジョンをはっきりさせる ……… 147
交渉の成否はビジョンで決まる ……… 148

Part 6 ソクラテスだってかなわない
すばらしい質問という芸術と科学 ……… 150
医師と弁護士は適切な質問ができない ……… 152
よい答えを引きだす質問 ……… 153
こんな質問は相手を追い詰める ……… 155
質問で相手との関係を変える ……… 156
魔法の質問「私に 何ができますか」 ……… 158
正しい道へ導く疑問詞型の質問 ……… 159
質問は簡潔にして手短か、1回に1つだけ ……… 163
正確な質問は創造的な 行為である ……… 164
だれでも安心感を与える質問 ……… 166
レーガンと パウエルの言葉の使い方 ……… 167
安心させる交渉は手ぬるくない ……… 169

Part 7 パワー・ツール
3プラス、ストリッピング、プレゼンテーション ……… 174
3プラスはプレッシャーを与えない ……… 176
ポジティブ・ストリップ・ ライン ……… 177
顧客を興奮させてはいけない ……… 178
「ストリップ・ライン」を 使う ……… 179
買いたい気持ちにブレーキをかけろ! ……… 180
ネガティブ・ ストリップ・ライン ……… 183
陪審員の気を引く非常識な方法 ……… 184
ネガティブな発言で相手を驚かす ……… 185
ネガティブ・ストリップ・ラインの使い方 ……… 187
なぜ営業マンはプレゼンしたがるのか ……… 188
陥りやすいプレゼンテーションンの罠 ……… 189
もうプレゼンは必要ない ……… 190
プレゼンするより問題を把握せよ ……… 191
相手が見たいものだけを説明する ……… 193

Part 8 実際のところは、わからない
心を白紙にする ……… 196
うまくいかない原因は思い込みにあった ……… 198
甘い言葉であおられない ……… 199
価格競争に巻き込まれない唯一の方法 ……… 201
ネガティブ思考は捨てなさい ……… 203
ネガティブな気持ちがスランプを 招く ……… 205
顧客の本当の気持ちはわからない ……… 206
思い込みの罠にはまらないために ……… 207
思い込みはあらゆる交渉に潜んでいる ……… 209
相手のなげにげないひと言に気をつける ……… 211
思い込みを逆利用してみる ……… 213
思い込みをなくすために調査する ……… 214
あなたはシンプルなことをすればいい ……… 216
メモは顧客の信頼を生む ……… 219
メモは箇条書きでよい ……… 221
先に情報を与えると損をする ……… 222
情報を漏らす「無自覚なスパイ」 ……… 223
こぼれた豆を拾うのは慎重に ……… 224

Part 9 決定を下すのはだれだ
真の「決定権者」を見つけだす ……… 227
堂々巡りの交渉はもうイヤだ ……… 228
決定権者は意外なところにいる ……… 229
メッセンジャーにはこちらから協力を申し出る ……… 232
ブロッカーに注意せよ ……… 234
いきなりトップから交渉してみる ……… 236

Part 10 求めるものを手にする
アジェンダを活用して成功を収める ……… 239
アジェンダに書くべきこと①問題点 ……… 241
アジェンダに書くと、 問題の本質が見えてくる ……… 242
お荷物と問題点の違い ……… 246
アジェンダに書くべきこと②あなたのお荷物 ……… 247
アジェンダに書くべきこと③相手のお荷物 ……… 248
お荷物を放置しておくと成果は得られない ……… 249
アジェンダに書くべきこと④求めるもの ……… 250
紙に書かなければ 「求めている」ものはわからない ……… 252
アジェンダがあなたを 守ってくれる ……… 252
アジェンダに書くと、やるべきことが見えてくる ……… 254
アジェンダに 書くべきこと⑤今後の予定 ……… 255
アジェンダはこうして作る ……… 256

Part 11 本当の予算管理
時間 エネルギー お金 感情 ……… 260
焦りが自分の立場を不利にする ……… 261
予算をチェッ クしながら交渉する ……… 262
自分のスケジュール通りに動く ……… 264
時間とエネルギーの無駄遣いはなぜ起こる ……… 266
同僚にどこまで助けてもらうか ……… 269
予算をコントロールできれ ば、挽回もできる ……… 271

Part 12 完璧な準備
極める ……… 273
チェックリストとログの活用法 ……… 275
チェックリストとログに書くべきこと ……… 276
あなたも優秀なネゴシエーターになれる ……… 282
自分能力を最大限に発揮しよう ……… 283

もっと上をめざすなら ……… 285

謝辞 ……… 286

90日間返品保証。

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著者紹介。

 ジム・キャンプ

 交渉エキスパート/コーチ2100社長兼CEO

 500を超える会社や団体における何千もの交渉を通じて交渉術のコーチングを行う。テキサスインスツルメンツ、インテル、IBM、メリルリンチ、シスコシステムズ、米国国防総省ほか世界中の企業で10万人以上のビジネスパーソンを指導。

 著書は全世界で12の言語に翻訳され、世界的ベストセラーとなっている。特に最初の著書『交渉は「ノー!」から始めよ』は、ニューヨーク大学やフロリダ大学をはじめとするいくつもの大学で、経営学修士をめざす学生の必読書となっている。講演はアメリカにとどまらず、イギリスやドイツ、ロシア、ルーマニア、日本など多数の国で行っている。

 その精力的な活躍は、CNN、CNBC、ウォールストリートジャーナル、ハーバード・ビジネスレビューなど世界中の権威あるメディアで紹介された。。

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2014-06-21 | Posted in 未分類No Comments » 

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